お取り寄せページ
コラム

4つの仕事を持つパラレルワーカーで1児のママ-30歳を過ぎて見つけた、自分らしい生き方と働き方


仕事が続かない…義務感に焦っていた日々

40歳でASDの診断を受け、ASD当事者としての立場から、様々な体験や経験をYouTubeで発信したりライブ配信をして2年になります。
そうしていると、発達障害当事者の方の様々な声を聞きます。
特に仕事ができない、続かないなど、仕事について悩まれている方が多いように感じています。

今でこそ元気に働いていますが、私も仕事には随分と苦労しました。

大学を中退してから今までに仕事の種類は20種類程、職場は実に30か所くらいを転々としてきました。
水商売をはじめ、不動産営業、バーテンダー、コーヒーのルート配送、家電のライン工、コールセンター、介護職……。
ですが、32歳くらいまで何をやってもダメでした。

やる気がないのではなく、どれも長く続けようと必死にやるのですが、本当に仕事ができませんでした。
空気が読めなくて失敗したり、求められていることがわからず怒られ続けたり、居心地が悪かったり、職場のルールに納得できず意見し上司に嫌われたり。
それでも必死に頑張るものの、結局燃え尽きるように心身を壊してやめていくことが多くありました。

多少仕事がこなせるものでも、あまりに単調な作業や先行きが見えない仕事は、つまらなくなって辛くてやめていました。
どんな仕事をしても1年続くことすら稀(まれ)でした。

どうしてこんなに仕事ができないのだろう?
続かないのだろう?
ほかの人はなんでもなくやっているように見えるのに。

皆何気なく生きているようなのに、なぜ私はこんなに生きるのが苦しいのだろう?
きっと私の頭が悪いからだ。
自分の努力が足りないのだ。

と思っていました。

それでも、そのうち何かしらの「ちゃんとした仕事の正社員」をして、「一生同じ仕事を続けて」いかなければと、半ば義務のように感じて焦っていました。

自信を持てたことで気づいたこと

そうして困っていた32歳頃、あまりに仕事や通勤がつらくて、どうにか一人で自宅で仕事ができないかと必死で模索していました。
そして、絵を描けることから、「イラスト入りのチラシの作成」という仕事を思いつきました。

営業のために異業種交流会に参加していると、そのうちイラストではなく、「名刺やチラシ制作のデザインができないか」とたずねられるるようになりました。

そこで必要に迫られ、デザインソフトを未経験から独学で学びながら、頂いた仕事をこなしました。
わからないことだらけの中、わからない道具で仕事をするのはプレッシャーも強ければ負荷も高く、怒られることも失敗もありました。
しかし、自分の責任で自分で対応できることは、理不尽な社会に振り回されるよりもよっぽど楽に感じました。

そして何より、自分にできる仕事があったということ。
自分の感性を認められたこと。

それが新鮮でうれしく、デザインの仕事を通してはじめて自分に自信を持てるようになりました。
すると不思議なもので、ほかの仕事も楽しめるようになってきました。
それまではお金のために何もかも我慢して、言いたいことも言わず、嫌々働くことが仕事だと思っていたのですが、実際は「自分の意見を言ってもいいし、得意なことをしてもいいのだ」と気がつきました。

「自分は何をやってもできない、つらい」という仕事観が「自分にも仕事ができる、役に立てるし楽しい」に考えが変わったことで、はじめて“働く”ということに価値を見出せるようになったのだと思います。

自分は何がしたいのか、何ができるのかを考える

それから10年経った現在はフリーのグラフィックデザイナーに加え、会計事務所の事務、YouTuber、シンガーの4つの仕事をしています。

デザイナーの仕事は細々とはいえ、10年続いています。
その他の仕事も、2〜6年と続いており、過去の仕事ではありえなかった長さです。

4つの仕事を同時にこなすのはマルチタスクだし、どれか1つにした方が楽では? と思われるかもしれません。
でも、これはこれで私には合っているのです。

何故なら、まずどうしても正社員ができそうにないから。
体力的なものや子育てもあり、週5日8時間働くのがどうしても厳しく、社会性のなさにより人の中に長時間いてコミュニケーションを取り続けなければならないと消耗しすぎて心身を壊しがちなので、正社員として働くことは難しいと思っています。

また、YouTubeや音楽の仕事がしたいので、他の仕事の拘束時間が長すぎるとできなくなってしまうことなどから、仕事を1つに絞らず、4つの仕事を少しずつ回しながら生活しています。

42歳になって、過去にならなければならないと思っていた「ちゃんとした仕事の正社員」でもなければ、「1つの仕事をずっと続ける」でもない現在ですが、結構気に入っています。

得意なこととできることだけを仕事にして、苦手な社会性が必要な環境からは一定の距離を置けているので、ストレスも少ないです。
今の自分にとっては、これが一番良い仕事環境だと思っています。

時々忙しすぎてパンクしたり、疲れて半日寝込んでいることもありますが、どうにかやっています。

さいごに

どうしても私たちは他人の目や親の意見、SNS、世間の声などが気になって、「ちゃんとしなければ」「正社員にならなければ」などと考えてしまい、向いていない仕事や働き方に自分を追い込みがちかもしれません。
そして、できない自分を自分で責め、絶望し、いじめてしまいがちです。

でも少し立ち止まって自分の声を聞いて、自分は何がしたいのか、何ができるのか考えたり、人が勧める仕事を受け入れてみたりすると道が開けることもあります

仕事というものを今より柔軟にとらえてみると、世界が広がるかもしれません。

そして、どんな働き方や仕事であれ、自分らしくいられる場所や勝てる場所を見つけ、自分の気持ちを大切にすることが、幸せに働くことができ、ひいては幸せに生きていける道筋のひとつなのではないかと思っています。

寄稿者

NINO(ASD/YouTuber)
女性でASDを持つYouTuber。
ASDを中心とした発達障害のYouTubeチャンネル「NINOちゃんねる」はチャンネル登録者数3万人。
4つの仕事を持つパラレルワーカーで1児のママ。15年の抑うつ、10年の摂食障害を寛解。
生きにくい自分の人生に疑問を感じながらも答えが見つからず、40歳で発達障害(ASD)の診断にたどり着く。
診断を経て生きにくさの謎が解けていった現在、YouTubeにて精力的に当事者としての声や経験を発信している。

この記事は役に立ちましたか?

『凸凹といろ。』のもうひとつのかたち。
原点である紙のフリーペーパーも、ぜひ手に取ってみてください。

凸凹といろ。編集部

これまで紙でお届けしてきた記事は、すべて「凸凹といろ。編集部」として掲載しています。 Webでも引き続き、編集部一同で大切に紡いできたストーリーをお楽しみください。

関連記事

心もからだもささえる、あなたあのいしずえに。

PR
訪問看護ステーションいしずえ
お取り寄せページ
目次