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コラム

発達障害と薬物療法

2025.10.05

発達障害と薬物療法

発達障害って薬で治療できるのですか?

前提として、発達障害の治療法として現在推奨されるものは、特に年齢が低い程心理社会的治療(環境の調整、特性に応じた工夫、心理カウンセリングなど)が中心となります。
薬物療法を行っても、発達障害そのものが消失する訳ではありません。

しかし、薬で症状を軽くしながら日常生活をする内に、自分なりに工夫して支障なく生活できるようになることもあります。
また、自分に合った環境を整え、好きなことを楽しむ余裕ができたりすると、次第に薬を必要としなくなることもあります。

治療に使う薬はどんなものなのですか?

注意欠陥多動障害(ADHD)の中核となる特性(注意欠如、多動性、衝動性)を改善する薬として、以下の4種類が使用できます。

  • アトモキセチン(ストラテラ)
  • インチュニブ
  • コンサータ
  • ビバンセ(6歳以上、18歳未満)

これらは、「注意欠如」「多動性」「衝動性」そのものを軽減し、生活しやすくなるために役立つことが多いです。
基本的には毎日服用することで効果を発揮しやすい薬ですが、薬によっては休薬日(服用しない日)を作る場合もあります。

一方、自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核となる特性(コミュニケーション障害)を改善する薬はまだ存在しませんが、「易刺激性(イライラして怒りやすい状態)」に使用できる薬があり、それが以下の2種類です。

  • リスペリドン(リスパダール)
  • アリピプラゾール(エビリファイ)

コミュニケーション障害そのものを改善する訳ではありませんが、気持ちが和らぎイライラしにくくなることで、周囲とのコミュニケーションが円滑になることもあります
2種類とも持続性と即効性があるため、予防的に服用しても特につらい時に服用しても効果を発揮します。

発達障害全般の方の不眠に対しては、「メラトベル(6歳以上、16歳未満)」が使用できますが、成人には使用できません。

ただ、当然ながら全ての薬で副作用が出ることはあります。
副作用は薬によって様々ですが、例えばアトモキセチンであれば吐き気や眠気の副作用が代表的です。

また、特性を上手く活かしている方は、例えば抗ADHD薬の効果で、アイディアが湧きにくくなったり行動力が減ったり、本来は効果であるものがデメリットになることもあります。
そのため、薬を服用したことによる調子や生活の変化など全体を見て、薬が有効かどうかを判断することになります。

薬に依存してしまうことはないのですか?

薬物療法の心配として、「薬を一度始めたら、一生やめられなくなるのではないか?」という声をよく耳にします。
実はこれは正しくもあり、間違ってもいます。

「やめられなくなる」という状態は「依存状態」を指しますが、上記の薬の中で成分に依存性があるものは「コンサータ」「ビバンセ」のみです。
この2つであっても、実際に依存状態になる方は極めて少ないです。
薬に依存性があるためではなく、治療として薬物療法しか行っていないため、「薬を中止したら元の状態に戻ってしまう、だから薬は手放したくない」という現象を「薬がやめられない」と感じてしまうことによります。

RPGのゲームで例えるなら、キャラクター自身を育てずに強い装備ばかりに頼ってゲームを進めたけど、いきなり装備が使えなくなると丸腰では何もできない、といった感じです。

冒頭でも説明したように、発達障害と上手く付き合うためには、薬物療法だけでなく心理社会的治療が推奨されるという理由がここにもあります。

寄稿者

むすびメンタルクリニック院長
植家 雄士(うえか ゆうじ)
■大阪市立(公立)大学医学部卒業  ■日本精神神経学会 精神科専門医
レジデントとして総合病院に勤めるなか、「人間にとって、心のつらさが1番つらいのではないか」と感じ、精神科・心療内科を専門とするようになりました。
診察や心理カウンセリングを通して、1人で悩むあなたに寄り添い、一緒に解決方法を見つけていくような治療を心掛けています。
今まさに悩んでおられるあなたが、より良き人と出会い、明るい人生になることを心より願っております。

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